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ラフマニノフ交響曲 第二番 のこと

Jul 5

2013

つづきまして、6月29日に行われました、詩の朗読&パフォーマンスライブです。

ご来場いただきました方々、応援いただきました方々、関係者の方々、
ありがとうごいざいました。
大変に貴重な経験をさせていただきました。

こちらの企画は、「甲秀樹と若き男子作家」というタイトルにもみられるように、
今回、甲先生の作品とならんで展示している、
若い作家さんたちの作品を使ったパフォーマンスライブでした。

その若い作家というのは、こちらの方たちです。

散文などをつくっている川嵜雄司さん。
IYAYOWORKの公演でもその仮面を使わせていただいた、仮面作家坂爪康太郎さん。
服飾学校にてその才能を認められた、木村彰成さん、松崎英弥さん。

出自の違うこれら作家さんの作品を、ステージに乗せる場だったのです。
今回ぼくは、パフォーマンス担当として、
それぞれの作品を舞台に上げ、それぞれの作品の魅力を引き出すのが仕事でした。
もちろん、ぼくの「演劇」という作品発表の場でもありました。

川嵜雄司さんは、自分でつくられた詩を、
坂爪康太郎さんの仮面と、松崎英弥さんの衣装を身につけて朗読するということだったので、

ぼくは、木村彰成さんの衣装を着て、坂爪さんの仮面で演じさせてもらうことに。

さらに、今回の企画者であり、伝説的な画廊「ギャルリー美蕾樹」のオーナーでもあった生越燁子さんより、ある指定があったのでした。
それは『ラフマニノフ交響曲 第二番』を使うようにという指定でした。
その曲を使えば、あとは何をやってもよい、編曲しようが、BGMにしようが、お任せするとのことでした。


このそれぞれの素材をいかに組み上げて演劇にするのか、
この話を聞いた当初は、
複雑に絡まったあやとりを、さあ取ってみろと言われているような、さてどうしようという気がしましたが、
いまにして思えば、こうして枠組みがある程度きまっているほうが、
限定されているほうが、発想の出発点がみつかりやすいものかもしれません。

「今日の晩御飯なににする?」「なんでもいいよ。」
では世の奥さまは参ってしまうわけです。
「エビを使った、なにかさっぱりしたものを」
とでも言われれば、世の奥さまは考えます。

ぼくも世の奥様にならって、知恵を振り絞ってみたわけです。

まず、参考資料にと貸していただいた、ラフマニノフ交響曲第二番を聞きました。
これが交響曲というよりは、大行進といったようにけたたましいもので、
さあ、どうだ、おれは天才だぞどうだ!と若さたっぷりに駆け抜けているような、
あぶなっかしさと、爽快感がありました。
調べてみますと、この第二番は、
若きラフマニノフが第一番の絶望的な失敗から立ち直るために、
心理学者に「おれはできる!」催眠術をかけてもらって、作り上げた曲なのだそうです。

そこで、この「若さ」に目をつけて、今回は「若さ」でまとめてみることにしたのです。

と、あたまにひらめいたのが、ロートレアモン伯爵の長編詩「マルドロールの歌」です。
「伯爵」というのは偽名で、本名はイジドール・ドゥキャスという若き青年です。
しかもかれは、24歳で亡くなってしまうのです。いわゆる夭折の天才というやつです。
この「マルドロールの歌」というのは、ぼくも24歳くらいで出会いまして、大変な衝撃をうけた作品なんです。
世界文学史的にみても、ずいぶんな問題作で、
荒々しく毒だらけの文章のなかにみられる、機知と想像力のたくましさに、
脳みそがズブズブになってゆく快感があるのです。

ぼくの好きな寺山修司さんも、この本が大好きで、短編映画にもしたほどです。

いつかぼくもこの本を使ってなにか演劇にと思っていたので、ちょうどよい機会でした。
そこで、この話の、序盤を抜粋して演劇にすることにしたのです。


ラフマニノフの交響曲第二番は、全部で三楽章あり、それぞれが10分ほどでしたので、
音楽にあわせて、三部構成にしようと思い立ったのもそのころだったように思います。

つまり、マルドロールの歌の序盤を10分でやりきろうと考えたのです。
これは結果からいうと、なんとかなりました。
これは後日動画公開しようと考えていますので、またアップしましたらこちらで連絡します。


さて、三部構成ということにしたので、
坂爪さんにも急きょ仮面を三枚作ってもらうことにしました。
しかもひとつのはなしに一枚では面白くない
途中、二枚使った仮面劇にでもしてみようとおもい、
結局は四枚作ってもらいました。坂爪さん、ありがとう。

そうです、第二部は、仮面を二つ使った仮面劇にしたのです、
きっと一部でしゃべりすぎるだろうから、二部はゆったりとした動きで見せようと。
これはほとんどが「動き」から考えていったので、文字にすることは少ないですが、
とっかかりとして、ラフマニノフさんの名言?を使わせてもらいました。
それは、ラフマニノフさんが落ち込んで、作曲ができないスランプ状態のときに言った言葉なんですが、
「ぼくにはもう何年もライ麦のささやきも、白樺のざわめきも聞こえてこない」
です。ここを起点にして、これをなんだか美しくみえる詩にして、その詩を音楽のなかでぽつりぽつりと唱えたりもしました。


さて、第三部。
なぜだかわかりませんが、ジャン・コクトーさんのトリッキーなおはなしが合いそうだと思ったので、
はじめは「阿片」という療養記をやってみようかと思ったのですが、これが音楽に合わない。
たぶん、ずいぶん老いぼれてから書いた本だったからではないでしょうか?
若さが必要だということで、
若い時に書かれたという散文詩「ポトマック」に目をつけました。

なんとなく、音楽のイメージとして、第一楽章と第三楽章は似ているのです。
だから、第三部も第一部と似たものになりそうだなと思っていたのですが、それでは飽きてしまう。
が、ポトマックには、それがユニークだといわれる元ともなった、64枚の挿絵があるのです。

この奇妙な挿絵をアニメーションにしてはどうか、
そうしたらその間はしゃべらずに済む!
というヨコシマな気持から、アニメーション作りにとりかかりました。
スキャンして、データにおこして、動きをつけてゆく…
これでも口では言いにくいので、後日動画をアップ予定です。


こうして、「マルドロールの歌」「仮面劇」「ポトマック」と並んで、
これでは難解すぎやしないかという懸念もありましたが、
そこは若さのせいにして乗り切ってみようと、動き出してみました。

ところがはじめてみて、これが不思議と音楽に合い
音楽とともに見ると、なんとなくわかる気がしてくるのでした。

それに異様な世界観を支えてくれる、奇妙な仮面と、壮大な衣装

もろもろにささえられて、この大海原をなんとか乗り切れたように思います。

ここで写真でも紹介できたらとは思うのですが、
ちょっと写真を撮るのを忘れていまして、
ですので、後日動画をアップしますので、そちらでこの芝居の模様をすこしでもご覧いただけたらと思います。

感触としてはまずまずでしたが、まだまだやってみたいという気にもなっています。
これもまた一人芝居のストックとして、レパートリーに加えておこうかと考えている次第です。
いずれ、「マルドロールの歌」全編を演劇化できたらいいなぁ。一時間くらいにおさまると、なおよいかもしれません。

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