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朗読CD のこと

Jul 7

2013

「甲秀樹と若き男子作家」展へむけて、もうひとつ準備をしていたものがあります。
それは、朗読CDです。

朗読CD『南へ』

若き作家さんたちはみな、会期中に自分の作品を販売すると聞いていましたので、
ぼくもなにかを売ってみたいと思い立ってはじめました。

だけれども、ただ、朗読するだけでは面白くない。
なにか演劇的なこと音声にできないものかと考えたんです。
そしてそれは、数十分に圧縮されていながらも、
聞いた後には本を一冊読み終えたくらいの読後感に浸れるものがいいなと思いました。

そこで、次の三つの作品に決めました。

江戸川乱歩の「赤い部屋」
マルキ・ド・サドの「新ジュスティーヌ」
サン=テグジュペリの「人間の土地」

どれもこれも、摩訶不思議なお話ばかり。

乱歩さんの「赤い部屋」は、
「赤い部屋」というあやしい倶楽部にやってきた新入会員のTが、
みずからの数奇な半生を物語るというお話です。
Tがいうには、なにをやっても退屈でのらりくらりと生きていたのだが、
ある日、面白い暇つぶしをみつけたというのです。
それは、偶然に見せかけた殺人です。
善意からの一言で、決定的にその人を死にいたらしめてしまうような殺人法の数々です。
そうして、「じぶんは狂人かもしれない」と苦悩しながら、半生を語り終えたTは、
飲み物をもって入ってきた給仕女に対して、例の殺人法を実行し、
偶然にみせかけた方法で、自殺してみせるのでした。

この演劇的な筋立てが、このCDにうってつけだなと思ったのです。

サドの「新ジュスティーヌ」は、
いわずとしれた、あのSMのSの語源となったサドによる小説です。
美徳の権化ともいえる美しいジュスティーヌが、悪人たちの間を渡り歩いてゆくのですが、
それでも悪人たちは惡のかぎりをつくし、ジュスティーヌは不幸へと落ちてゆく、
というなんとも不道徳なお話です。
この長いはなしの一部を抜粋して、
いわゆる官能小説的な部分と、悪についての考察を悪人同士で語りあう部分とをまとめてみました。
とても不道徳な内容なので、声にするだけでも、十分に面白いものです。
この歳になって、小学生のように「うんこ」「ちんこ」を連呼している気になります。

うってかわって、サン=テグジュベリの「人間の土地」は、
あらゆる小学校・中学校・高校の学級文庫に収めるべき一冊です。
「星の王子様」の作者でもあるサン=テグジュペリは、
職業飛行家でもありまして、郵便輸送機の会社に勤める飛行機乗りでした。
当時の飛行機というのは、まだまだ危険な乗り物で、
さまざまな事件や、空の不思議が、かれら飛行機乗りたちを襲うのでした。
(おそらく、「紅の豚」の世界に近いものがあると思います。)
飛行中に巨大な竜巻がいくつも集まっている空間に来てしまったはなしだとか、
雪山に墜落して生還を果たした同僚のはなし、
民族間の小競り合いに首をつっこんだはなし、
はては、自分がサハラ砂漠に墜落、遭難し、奇跡的に生還を果たしたはなしなどなど。
読んでいて心が躍り、目がしらがあつくなるようなものばかり。
人間愛というか、人間へのどうしようもない信頼に満ち溢れているように感じるお話です。

なお、サンテグさんは、大戦中に戦争に参加し、地中海に沈んで亡くなったそうです。
飛行機乗りのあいだでも名の通っていたサンテグさんは、
たとえ敵軍であっても、サンテグさんの飛行機だけには出会いたくない、手は出すまい、と誓っていたそうなのですが……
サンテグさんは、たとえ戦争であっても進んで飛行機に乗りたがったようなのです。

さてさて、この素敵な三作品を音声にしようと息まいて、
抜粋、台本作りと、コツコツ作業を進めていきました。
ようやく本をつくりあげ、さあいよいよ録音だ、というところまできて、
おっとっと、と立ち止まりました。
いえ、気づいたのです。

どうやって録音しようかな、と

スタジオを借りて録音しても、音響に関してぼくは素人なので、
よくわからないうちに時間が経ってしまい、お金もかかってしょうがないだろうと踏んでいたものですから、おのずと自宅録音を考えていたのですが、

スカイプなどにつかえるマイクがあったので、それで録ってしまえと高をくくっていたのですが……
調べてみると、そんなもので録音などと笑止千万だという記事をみつけてしまったのです…。

それで、なんだかんだつきつめてゆき、
自宅に防音室を作ることにしたのです。

もちろん、最初は、なんだか簡易的に、お芝居でつかったパネルで囲めばいいだろうなんて軽く考えていたのですが、
やってみたらこれがなんの防音効果も得られない、ただの掘立小屋
むしろ反響音でやたらうるさい。
挫折でした。
この悔しさに、「自作防音室」で調べてみますと、
たくさん出てくるわけです。それぞれの防音室が。
とくに音楽関係の方々のなみだぐましい努力が。
ぼく、その方々に胸打たれ、半端じゃいけねぇなと心を入れ替えました

作り方、をおおきくまとめれば、
「骨組み」に、重量のある遮音材として外壁に「石膏ボード」をとりつけ、さらに「遮音シート」をかけて防音効果を高める。
内側には、吸音材として「スタイロフォーム」「グラスファイバー」を仕込み、ベニヤ板や「遮音シート」でふたをする。さらにお好みにあわせて、「コルク板」や、「パンチカーペット」など吸音するものを貼り付けて内装を整える。

……。
あの悔しさを二度と味わうまいと思うと、反動なんでしょうね。
これらの素材をすぐに、すべてあつめました
で、組立てました

自作防音室

ちょっと無骨ですけど。
こわいくらいの執着心でつくりあげました。
(なんだか大道具をつくるときは、毎回歯を食いしばって、鬼の形相で作ってます。)
内壁には、さらに吸音ということで、
カーペットの下に敷くという、厚さ5ミリの吸音クッションをとりつけました。
さらには、吸気孔と排気孔を開け、音漏れしないように加工し、換気扇をつけました。

文字にすると簡単そうにみえて泣けてきますが、
作業工程としてはハゲそうなくらい面倒でしたよ。
しかも、芝居の準備も同時進行で時間もなかったものですから、
正味、三日でつくりあげることに。よくやったねとじぶんを褒めてあげる。

しかしですね、おかげさまでこれはかなり実用性がありまして、
防音室の中で、大声をあげても、そとには日常会話より小さいくらいの音しか漏れないのです。
中で歌っても、隣に住んでいる人には聞こえません。

さあ、これでいざ録音です!
と思われましたが…いやいや、忘れてはいけません、マイクです。
はい、買いました。これ。
SHURE SM58

いちばんベーシックなやつらしいです。SHURE SM58。ダイナミックマイクです。
ほんとうはコンデンサーマイクという箱型をしたマイクに、
ポップガードという、マイクを吹いてノイズにしないようにする、金魚すくいのすくうやつみたいなのをつけてやるのがいいらしいのですが、
さすがにそこまで予算なくて。
(よくミュージシャンとかのレコーディング映像とかでみかける、マイク前についてるあれです。)

よし、じゃあさっそく録音だって、いってるじゃないですか、まだですか、まだなんですか?なに?オーディオインターフェイス?を買え?

オーディオインターフェイス

これについては、ほんとよくわかっていません。
いわれるがままに買った素人まるだしです。
なんでもギターやらMIDIやらつないで直接録音やら打ち込みやらができるとか。
で、なんか音楽作れるソフトもついてきたのですが、
いや、そこまで手をだしている余裕がなかったものですから、
とりあえずはマイクをつなぐ。で、こいつをパソコンにつなぐ。

さらに、いつもお世話になっている、Adobe premiereさん立ち上げて。。。

ようやく録音。


……録れました。
この第一声が録れたときの感激たるや。

しかしまぁ、いつまでも浸っている余裕もなかったものですから、
練習、本録りと重ねて、編集!
音楽をつけたり、効果をつけて、それっぽくしたり……

(……この編集の作業も、すごく時間のかかるものなんですが、
とりたてて話すことがない……編集、としか言えない……。)

そうして地道に、完成したのがこれです。もう一度!
朗読CD『南へ』
デザインは、もちろんIYAYOのデザイナー、杉村彩です。
なかみはこうなってます。

朗読CD『南へ』ジャケット

このヴィジュアル、とても気に入っています。
今回も杉村に、作品のイメージだけを伝えてあとは、お任せしていました。
いつもいつも、面白いものをあげてくれるので、ほんとうに信頼しております。

タイトルの「南へ」ですが。
それは、まだ見ぬ理想郷へ、とかそういったイメージです。
どのお話も、世間的にはなかなか受け入れられないものですが、
それでも、なにかを求めて、どこかへ向かいたいという、切なる思いや願いの詰まったものばかりです。
その「どこかへ向かう」という思いをこめて、このタイトルにしました。
元来、「南」というのは、そういう願いや救いや極楽があるイメージがあります。

それはそうと、
おそらく、こういう話を音声化した人は、あまりいないと思います。
と、商品の宣伝をようやくはじめます。

これは聞くだけでいいんです。。というと、あの英会話のCMみたいですが、
これは読書のストレスがありません
ある程度、イメージの保管をする音楽が入れてあったり、わかるような読み方をしているので、すらすらとその世界が描かれてゆきます。
その数分間、聞くだけで、一冊の本を読んだ気になれます。
何時間もかけて本を読むのが面倒だという人は、これをちょっと聞いてみるのはいかがでしょうか。

もちろん、ここで読まれているのは、全文ではありません。

でも、この音声を手掛かりに、本文を訪ねてみると、
不思議とスラスラ読めてしまうという工夫もしてあります。
わけのわからなかった話が、わかる気になります!

そうゆう門戸にでもなれたらいいなとも思って、このCDを作りました。

さて、それだけ楽しめて、500円。
ワンコインです。SDガンダムが買える値段です。
皆様、いかがでしょうか?

このCDは、今後の公演でも販売しますし、
欲しい方は、IYAYOWORKのほうに一報頂けたら、送料別で販売いたします。

どうぞ、お楽しみ下さい。どうか、ご協力ください。

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