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猫のこと

Jan 20

2012

一匹の猫に人生の岐路をまかせたことがあります。

「はい」か「いいえ」の選択のときだったのですが、
自分の人生においてこれは重大な分岐点であるぞという実感が多分にあり、
その重圧からか逡巡しておりましたときのことです。

一匹の猫が通りかかって、ちょうどぼくの目の前でぺろぺろと毛づくろいをはじめるではありませんか。

ぼくと、その人と、さし向いでの話し合いだったのですが、
そこに第三者がぶらりと見物にきたわけです。

こちらは瀬戸際に立たされているのに、あちらは呑気に身体をくねらせては、こちらを見るともなく、ただただそこにいる。

ぼくの方はもうどうしてもその猫が気になってしまって、
ええい、侭よと、わが人生を猫一匹にまかせてみました。

ニャーと一回鳴いたら「はい」、ニャーニャーと二回鳴いたら「いいえ」。

かんたんな辻占です。
こんなとき猫は良いですよ、重圧をかけようにも見事ななで肩で、肩すかし
頭を悩ませようにも、あんな小さな額なわけですから。
なんて落語みたいな小噺はどうでもいいとして、

ですがそうすぐに鳴くわけもなく、
しばらくはぼくも話半分にうんうんとうなり声をあげておりました。

と、ついに時はやってくるわけです。

その選択がどうだったのかは、いまだにはっきりしていませんが、
しかしそれも運送屋赤帽のおっちゃんにいわせれば

「人生において、自分が嫌になるようなことは絶対にしていないよ。すべてちゃんと自分で選んでいるんだから。自分で選んだことに間違いはないですよ。」

とのことですので、
たしかにその選択を、「猫に選ばせよう」と決めたのもぼくですし、
よくよく考えれば、一声鳴くのと二声鳴くのとではどちらの確率が高いのかも、うすうすわかっていたのかもしれません。

だからたぶん、一歩動いたときにはすでに決まっていたのかも。

なんてロマンッチックなお話を書いてはみたものの、
しかしぼくは嘘つきですので実際はどうだったのでしょう、とも付記しておきたいと思います。

あの日はとても寒かったので、その猫にはろうそくの芯になってもらいました。

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