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路地裏のこと

Jan 19

2012

メモしたり書き残しているわけでもないのだけれど、

頭の片隅にずっと覚えている言葉、

難しい蔵書にかいてあったような不朽の名言でもなく、

偉いだれかれのありがたい言葉でもなく

酔っぱらったサラリーマンたちがバーのママを相手に管をまくような、

そんな二束三文の路地裏の名言。

だれしもそいゆう言葉をしらずしらずため込んでいるものですが、

そうした名言をあらためて書き残しておくのも面白いのかなと思いまして。

このネットの片隅にちょっとだけ唾を吐いておいてみようかなと。


路地裏の名言というからには、
やっぱり路地裏で拾ってきた言葉から。

酒場の酔った勢いだからどんなことを話していたのだかさっぱりわかりませんが、
ふと辻占のようにはっきりと聞こえてきた言葉。

『詩人ってのはこの世でいちばん猥雑な人間だからね。』

なんだか世の中の人すべてが実はそう思っているのではとも考えてしまう。
あんな美しい言葉紡ぎだす詩人が、世界一の猥雑。
二律背反のような言葉はしかし、妙なリアリティをもってのこっていたりします。
そうしてぽんと背中をおされて、ぼくでも詩人と名乗っていいのかもしれないとさえ思えました。

つまり、そこは「詩人」の寺山修司にいわせれば
「誰が詩人だってゆっても文句言うことはできないんですよ。「浮浪者」なんていわれるときには、嫌だったら詩人だっていえばいいんですよね、詩人ってゆうのは別に法律できまってるわけじゃないから、便利だからね。」とゆうこの猥雑さ。

こうやって路地裏の名言と通底するわけです。


また、あるときは写真にかんしてこんなことを言っている方が。

『素人でもね、一万枚とれば一枚くらい良いのはあるわけだよ。それを千枚に一枚、百枚に一枚と「確立」を上げていくことがプロなんだよね。』

『確立』というあたりがうまいなと思いました。
努力、とか精錬とかいったことばを飛び越えて、
『確立』という不確定要素をあやつるまでに神がかってくるというのが面白い。

『あの人はね、ただの水たまりをぱちりととっても作品になるんだよ。』

と森山大道を賞していったのはゴールデン街のおじさま。被写体は選ばずに、確立1分の1。一発ですごさがわかりました。


もっと小汚い名言を予想されたかもしれませんが、
飲み屋なんてのは男たちが見栄をはるところなので……「ほらほら見てください、これが『腹の上のポニョ』ですよ。」などなどくだらない冗談ならばありますが、いやいやこれは名言ではないでしょうよ。


『最近は、おれたち俳優が作家に面白いものを書かせてやれないんだ。』
「そうゆう焦りがあるんですか?」
『ああ、あるね。』

と言ったのはとある俳優さん。これはちょっと衝撃でした。
まがりなりにも作家業を続けていく気ならば、俳優側のこの苦しみも分かっていないといかんのだなと思いました。

それから、前のアルバイト先でのらりくらりと仕事をしていたときに

『時間を売りに来ているんじゃないんだぞ。』

と叱られたのも名言といえば名言かしらん。

『あの人はきっと死の近くで仕事してるんだね。だからあちら側の影響をうけちゃうんだよ。』

とは不慮の事故に悩まされ続ける映画監督の作品をみていった方の言葉。
まあその監督ってのはテリーギリアムっていって、もとモンティパイソンのアニメ担当のメンバーで「12モンキース」とか「モンパルナスの鏡」とかの監督さんです。

そういえばいまの借家の前で交通事故があったときに、車にはねられた少年に手を当てている女の人がいて、警察があなたはだれと聞くと、

『わたしはヒーリングができるのでやっています。』

という方がいらっしゃいましたが……これは名言ではないですね。名人のほうですね。
「肩こりを治してあげる。」と気功を使われたこともありまして、そのご宗教の勧誘まで受けましたが丁重にお断りしたこともあります。

なんだか名言というにはあまりに実が無くなってきましたが、まあそのあたりも路地裏ということでご容赦願いたい。
落書きシリーズなんてのも書いていけば面白いのかもしれませんが、
いかんせん書きとめていないので、文字面は覚えていないのです、
しかし、とある大学付属病院のトイレの壁が落書きだらけだったのには面白さを感じました。

『人と出会ったら、その責任をとらなきゃならないぞ。』
『演出家ってのはおせっかい焼きだからね。』

といったのはそれぞれべつの演出家の方。
なんだか気質のようなものが同じだから並べてみました。
まれに演出家の書いた演劇書を読みますが、こうゆうようなことはわざわざ文字に書き起こすことでもないのか、いまだに本で読んだことはありません。
口頭での喋りのなかで伝わっていくもののようですね。

『もし父に似ているとしたら、それは血ですね。』

とある演出家の息子の作品を見に行って、似てますねといったらこんな言葉が返ってきたのでした。それほど名言でもないのですが、なんだかこちらが恥ずかしくなるくらい、まっすぐに言っていたので、覚えてしまっています。顔かたちや性格でなく、作品が似るとなればそういう他ないのかもしれませんが、ぼくだったら恥ずかしいのと悔しいのとで、そんな溌剌とは言えないでしょう。


まだまだ思い出せば出てきそうですが、
やはり路地裏名言集ですから、たいした内容にはなっていないのかもしれません。
それでも、ぼく個人としてはどれも忘れられないひとつの要素、
浅田真央風にいうなら「element」となっておりますものでして、
書いておいても損はなかったかと思われます。

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