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記念館のこと

Dec 24

2010

青森県は三沢市の寺山修司記念館にいってきました。

粟津潔さんデザインによる天井桟敷シンボルマークのお出迎え。
手すりには寺山さんの映像作品によくあらわれる指のオブジェ。
ああ、ここが来たい来たいとねがってやまなかった寺山修司記念館。
時間の都合もあり、早朝、開館してすぐに訪れてしまったら、
周囲のあまりの静けさに、まさか定休日に来てしまったのではと冷や汗タラタラ。
もちろん、そんなことはなかったのですが、
青森はとてもひっそりとして、閑散としたものさびしい空気がただよっていて……
しじゅう何かに呼ばれているような妙なきになる。
それが海鳴りなのか、林を抜ける風なのか、活発な目に見えない妖精なのかは、おいておいて、
すぐそばに、探してやまなかった少女が、我が人生でいちばんの最接近しているかのよう。
なるほど、ここにずっと生きていると、気がつかぬうちに狂気にとらわれそうだなと、
ふとそんな気がしました。
青森。
車での旅だからこそ、車中からこの青森の田園風景や、独特の空気を肌で感じることができたように思います。
車の旅なればこそです。車です。車はとても素敵な足です。
車を借りたのは東京でした。
休憩をはさみつつ、高速を12時間……。
途中、岩手も後半のあたりで吹雪にあい、
高速道路の白線が路面を覆い尽くす雪ん子たちで見えなくなるなか、
それでも車を走らせなければならないというのは
いやはや、『恐怖』でした。
ゲームというのは、二次的に別の人生を生きて楽しむものだといいますが、
これは命がけのレースでした。
しかし、今思えば雪国の方々はなれたもので、そんな路面でもスイスイと走ってゆきます。
なんとか青森へつき、ホテルの方と少しお話をすると、
今年はすごく温かくて、これでは雪が降ったうちに入らないのだそうです。
いやいや、東北の人々をなめたらいかんです。
車の運転も、かなりあらい……というか、気が短い。
田舎の人は時間がゆっくりだから、運転ものんびりだろうなんて、呆けた気持ちでかかったら追突されます。
のろのろと走ろうものなら、ガンガン追い抜いていく。気の強い方がおおいのでしょうか?
さっきも書きましたが、
ここで暮らすと発狂するんじゃないかという空気がそこらじゅうにまん延している。
気性が荒いわけではないが、内側で何かがすぐ燃え始める。沸きやすい血とでもいうと適当かもしれない。
たぶん、その沸き立つ血の矛先、そのエネルギーが発散される場が、
家の内部、家庭や周囲の集落だと思うと、まさしくそれが
寺山さんが描いていた青森の情景だと思えました。
狂気にとらわれた人物をよく書くマーティン・マクドナーという劇作家がいるのですが、
かれの作品を演出した人が彼をより知るために、彼がすんでいるアイルランドに訪れたらしいのですが、
この青森の空気と同じようなものを感じたらしいです。
ああ、ここならば、こんなになにもない土地であれば、なにか血なまぐさい事件が起きそうだと。
……なにもないというと、至極失礼ですかね。
さて、話を戻します。
寺山修司記念館、とても興味深かったです。
展示スペースには11の机があって、机ごとに、時代やテーマがわかれており、
それに関連する貴重な資料や展示物などがしまわれている。
見る人は、引き出しを開け、卓上に置いてある懐中電灯でそれらを照らしながら鑑賞しなくてはならない。
なかには音声や映像まで流れる机もあり、座ったままゆったりとその世界に浸ることができる。
一対一で、それらと向かうことができるのが魅力的。
ミニコミュニケーションというものも大事にした寺山さんらしくもある。
その展示スペース内でじっくりと見入ってしまったのが
寺山さん自身が一人で映っている映像で、一問一答形式で、突拍子もない質問に、次々に突拍子もない応えを返していくというもの。
これが、とってもシュールで秀逸でした。
「数字の6に色をつけるとしたら何色?」とか「カメラの高さはどこが一番いい?」とか「あなたは自分の名前をどう思いますか?」とかって質問を、寺山さんは、ひょうひょうとして
「緑ですね。だいたいゼロっていうのは白色で、一は赤……」とか「わたしは目の高さです。だいたい権力者ってのは人を上から撮って権力を誇示したがり、小津安二郎って監督は人を下からとって……」とか「それは、人がわたしを呼んで呼びやすいかなので、その人に聞いて下さい……」とか
おもいつきなのか、あらかじめなのかは知りませんが、
よくもまあそんなに口がうごきますねと、あきれ(しびれ?)させられます。脳みそを刺激されられてキュンとしちゃいます。
展示物はほかにも、著作物、資料、ポスター、蝋人形、実物大模型などなど、たくさんあり
時間が許せばいくらでもいられる空間でした。
さらに記念館の外には、記念碑というのがありまして、
裏の林へでてゆくと、寺山さんの短歌が道案内をしてくれます。静かな林の中にポツリポツリとある寺山さんの文字・言葉。
自然物と照らし合わせて、ようやく力を発揮する、テラヤマさんの魔術。
記念館という箱のなかにあるのはやっぱりもったいない。
指のマークをたどっていくと、大きな本のオブジェが現れました。
ものさびしい林と、重厚感のある石碑との対称がキュートで、異物なのに溶け込んでいるようで、な魅惑的でした。
言葉の錬金術師ともいわれるように、言語世界の精霊のような人だっただけに、展示物は文字が多く、
すこし見疲れしてしまい、もっと視覚的に訴えるものがあるといいなと思っていたので、
この石碑と、林を抜けてゆくときの青森の風景と、短歌との情景が
鮮烈にのこります。
こうなると、もう無性に恐山にいってみたくなるのですが、なにせ冬。そして雪。
これ以上の北上は、雪国の運転に慣れていないぼくには恐ろしく、
また行ってもどのみち閉山しているということもあり……
しかなたく、素直に予定通り、南下しました。
一泊目は青森でしたが、二拍めは宮城の秋保温泉にとまりました。
こちらのご報告は、また後日。


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