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月の髪に触る

Jun 10

2008

「ローマの休日」を見ました。

あれだけ時代を越えて愛されているのに、一度もきちんと観たことがなかったので気になっていたのです。

やはり愛される理由は隅々にまでありました。





某国の王女と新聞記者とのたった一日の出会いと恋の話。



当時はまだ無名で、これが映画デビュー作となったオードリーヘップバーン。新人とは思えない繊細さと物腰!どの角度から見ても愛くるしい女性!美しさとかわいらしさをどちらも極限にまで秘めている。そしてシーンごとに違った表情を次々に見せてくれ、それにまた堪らなく魅力されていく。芝居の構成と成立も、あれはきちんと考えてあるのだろうか直感なのだろうか、恐ろしく感が鋭い!!見ている者の目を掻っ攫う存在感とたおやかな芝居!すべてを兼ね備えた女優!!

改めてオードリーヘップバーンを見て、以前よりも近しい存在に感じ、そしてまたそれと同じくらい遠い遠い人なのだと感じた。





対する新聞記者役のグレゴリーペックもまた怪優だった。

誠実で紳士で、時に愛らしく、時に男らしく、存在感にあふれ、全てを包み込むような目をもっている。芝居への取り組みも至極勤勉な方なのだということがひしひしと伝わってくる。

学はあるが無知な少女である王女と相対する「大人」な人物を幽現させていた。







王女であるということを隠して、王室の外の生活を一人の女性として楽しもうとする王女。



正体を知っていつつも、特ダネ記事を書くために、気付いていないフリをして王女に近づく新聞記者。



お互いにウソを付き合うシーンは中々に滑稽。そうそう。監督や脚本家はこの作品を「コメディー」と位置付けているらしい。

そのウソつき二人が、あの「ウソをついている人は手が抜けなくなる口」に手を突っ込むのだ。面白い。





記者は特ダネに惹かれて王女に近づいているのだけれど、王女様と一緒にいると、しだいに王女様の純真に清らかさ美しいさに惹かれていく。



王女様は王女様で、下町の夢のような暮らし、美容室で髪を切ったりウインドウショッピングしたり、名所巡りや冒険活劇などなどを願ったこと全てを体験する。

まるで一日だけ神様からそうすることを許されたかのように。

そして恐らくは、その延長線上に、一人の女としての「恋愛」というものにも当然少女のような純粋な興味と好奇心があったのだろう。その夢のような一日は恋愛までも王女に手渡してくれたようだった。どこまでも優しく温かく見守ってくれる素敵な年上の紳士。まるで恋愛の対象として用意されてあったかのような、好ましい男性が始終側にいて守ってくれていたのだ。





男の利害と女の利害が一致したとき、それは出会うべくして巡り会った運命のようであった。





しかし魔法は一日限り。



王女はその望んだこと全てを経験した後、大使館に戻る決意をする。あくまで「王女」は「王女」であり「王女」という義務を忘れたわけではないのだった。





男は王女を大使館の近くまで送り届ける。このまま女が歩いて門の中へ消えていけば、愛する二人が二度と会えなくなる…

しかし男はその背中を見送り、女は自らの足で門の中へ消えていった。お互いに振り向かずに。

それはお互いにお互いの愛情を信頼し、またそうすることが、もっとも美しいままにこの神聖な一日を保っておけるからであったかのように思う。二人は美の世界に身を起き、心が結ばれてあるのだろう。





次の日、王女様の記者会見の場に二人は現れた。

今度は二人とも本当の自分の職業で対面したのだ。しかし、そうして出会ったのであっても、二人は互いの心情は通っていると言葉で伝えあった。

確かに、職業はウソをつき合っていたかもしれないが、紛れも無い男と女であったからだ。そしてそれは職業よりも雄弁であった!

やがて会見が終わり王女は幕の向こう側へ。記者団は街の方へと散っていく。最後まで一人のこるグレゴリーペックも、やがて舞台に背を向け街に戻っていくのだ。これだけ誇らしく、高潔で純粋な血があれば、二人はどこまでも貴く生きられると言わんばかりに!







なんという幸福な話なのだろう!美しい!!







これが現代のハリウッド映画ならどちらかが駄々をこねたり、仕事を放棄したりして、二人は結婚なんてしちゃったりしてセックスシーンなんかで終わったりするのだ。愚行極まりない。

そんな悪性の腫瘍にかかる前、病気になる前のアメリカにはこういった映画もあったのだと見直さなくてはいけない…。



とにもかくにも、観たことないかたには一度見てみることをオススメします。他の登場人物も全て心温まる良い方ばかり!かわいらしい人ばかりでした!白黒ですが色あせてません!!色まで見えてくるようです!

『もう一回やってくれ!』パシャ!

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