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十年の孤独のこと

Jan 22

2012

昼下がりともなれば、帰宅した小学生らが集う小さな公園があった。

子供たちにとっての目玉遊具は巨大な滑り台で、
二階建ての家の窓から飛び降りるような爽快感と見晴らしの良さがあった。
遊び慣れた子供たちでも一日に二度は滑り降りておかなければ気が済まないような、そんな滑り台であった。

ぼくが高校を卒業した日、友達をつれてなんとはなしにその公園へきた。
そして懐かしく思い、もう十年来そこにある滑り台を滑った。
雨の日だった。
プラスチック製の台は子供たちのお尻で研磨されつづけたこともありたいへんすべりが良かった。
友人はその日、滑り台で足の骨を折った。
その友人とはもうそれ以来会っていない。
とても再会したい人のうちの一人である。


おなじ公園の話で、ちょうどいまの愛犬を飼い始めたころなので、もう十七年も前であるが、
犬の散歩途中にその公園で手綱を離して遊ばせていたところ、
知らない女の子に飛びかかり、やたらめったにかみついた。
女の子はぐったりして動かなくなったので、ぼくは兄弟と犬を連れて逃げた。


また登校途中に友人が、その滑り台で首を吊って死んでいる男を見たという。

しかし早朝ぼくが起きぬけにその公園を見に行ったときには、
ある男が滑り台にサンドバックを吊るして、拳を叩きこんでいた。
おくせずにぼくがとなりのブランコで揺られていると、男はぼくにサンドバックの打ち方を教えてくれた。
翌日からぼくは早朝に公園にいくことをやめた。

公園にはベンチがあった。そこの下にはよくビニ本が捨てられており小学生だったぼくはらおおいに騒いでいた。そのとき一緒に騒いでいた一つ年下の子がいたのだが、その子は中学にあがるとヤンキーになって、ぼくのことは忘れていた。
中学では随分言動が荒れてしまっていたが、うわさで妹だけにはとても優しいらしかった。

あるとき、ヤンキーの子とその妹が公園のベンチに座っているのを見かけた。
夕暮れで薄暗い時間帯だったが、うわさ通りかれらは仲睦まじく座って抱き合っていた。
そしたその子は、妹のくちびるに何度もキスをしていた。

またあるとき、ここまでくると冗談のような話だが、その公園で真っ白な蛇をみた。


今年、その公園から遊具が消えていた。
あたらしい遊具にとり替えるための改修工事なのだそうだ。
夜、工事中のフェンスを越えると、遊具もベンチも垣根も消えて、
基礎工事のため穴だらけのとなっていた。
なんだか遺跡の発掘現場のようにみえた。
ぼくはその穴に向かっておしっこをして家に帰った。

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